自由論〈1〉 (1971年)

みすず書房1971 ¥1,080
¥0
讀了: 2010-09-20 古書

[投稿日] 2010年9月20日

 どうも、著名で古典的でさへある本論「歴史の必然性」「二つの自由概念」を讀み直すよりも、それが受けた批判に應へた「序論」を讀んだ方が力點が鮮明で面白いやうだ。
 この際、「人間性」などといふ道徳論を振り回す所や、正常でない除外すべき例として何かと狂氣を擧げる所など、現代思想からすれば引っ懸りを感ずる方面は目を瞑ってやるがいい。しかし、歴史家(や社會思想家)の用ゐる言葉に焦點を當てるやり方(pp.10-13,19,41-42.)は、オックスフォード日常言語學派の影響にせよ、言語論的轉回以降の理論に照らしてなほ古びてない。諸思想の相剋から思想問題自體の解消への動きを二十世紀の特徴としてバーリンが述べる時、そこにテクノクラシーやファシズムといった政治思想だけでなく論理實證主義やヴィトゲンシュタインの思考法も含まれ得ることに氣づいてゐたのかどうか。つまり、思想の問題を言語の問題へと解消する方法も、だ。またバーリンが(消極的)自由の名のもとに説く選擇や可能性の問題は、今日の讀者には、アガンベンが論ずる(非の)潛勢力と重ねて考へられよう。そんな想ひ着きは當然、政治思想方面で誰か物してゐるのかしれないが、むしろ歴史認識論において偶然論や可能世界論といった樣相論哲學を展開して貰ひたいものである。……「リアリズム(空想、生活の無知、ユートピア的夢想に対して)と呼ばれるものはまさに、生起したもの(あるいは、生起するかもしれないもの)を、起りえたはずのもの(あるいは、起こりえたもの)の文脈に据え、これと起りえなかったものとを区別する点に存するということ、そして(ルイス・ネーミア卿がかつて示唆されたことがあると思うが)結局のところ歴史の意味はこれに帰するということ」(「歴史の必然性」p.216)。

中央公論社と私

文藝春秋1999-11 ¥0
購入: 2010-09-17 ¥300
讀了: 2010-09-18 人文・思想

[投稿日] 2010年9月17日

 著者の『和田 恒 追悼文集 野分』(私家版、1981)への寄稿にも拘らず、この本で和田のことは觸れる程度であったのは案外だった。和田の病死は高梨茂の部下であったことからくるストレスのためと暴露されてゐる(p.228)。高梨のことをもっと知りたい。上司としてはひどい人格だったらしいが部下ならぬ讀者には知ったこっちゃない、編輯者としては「職人肌」「完全主義」(p.184)で企劃にシブい古本趣味が良く出てゐた。その嗜好のつながりで言ふと、『歴史と人物』編輯時のことに存分に筆を割いて貰ひたかった。本人も「私の中央公論社編集者時代でもっとも充実した三年間」(p.217)と言ふ位だから、『中央公論』や『思想の科学』の内情のことなんかより餘程面白くなりさうに思ふ。内紛や外患による治亂興亡を敍する方がジャーナリズムの需めには合ふのだらうが、本好きにとってそんなに悦んで知りたい事柄ではあるまい。

国立歴史民俗博物館研究報告 第61集

第一法規出版1995-01-20 ¥4,928
購入: 2010-09-12 ¥100
未読

[投稿日] 2010年9月12日

一九九五年一月發行。共同研究「生命観―とくにヒトと動物との区別認識についての研究」

目次 http://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/ronbun/ronbun3/index.html#no61

振仮名の歴史 (集英社新書)

集英社2009-07-17 ¥0
購入: 2010-09-12 ¥322
讀了: 2010-09-21 言語学

[投稿日] 2010年9月12日

 著者のマニアックな良さが新書判だと出せなかったやうで、ガッカリ。この程度が當今の新書に求められる「わかりやすさ」なのかも。
 チト驚いた豆知識をメモ。「『夜想』などの雑誌を出版していたペヨトル工房(一九七九?二〇〇〇)を主宰していた今野裕一は筆者の実兄であるが、筆者も「北野真弓」などという名前を使って『夜想』の編集の手伝いめいたことを少しの間していた」(p.147)。それだから『消された漱石』はあんな凝った版面設計だったのか?

ドイツ史学思想史研究 (1976年)

ミネルヴァ書房1976 ¥3,888
購入: 2013-11-23 ¥1500
讀了: 2010-09-10 古書

[投稿日] 2010年9月11日

 期待したコゼレックらの概念史・社會史についてはこの本が取り上げた後の時代に屬すゆゑ論及されてなかった。概觀としてはよく調べてあるものの、對立する二項を取り出したところで論が終ってしまふのでもっと突っ込んだ考察が欲しい。これをちゃんと「思想」史とするには、哲學的訓練を經た上で諸概念の歴史的關係の内實を論理に即して考へ詰める作業が要る。
 本書刊行以降に發表された關聯論文として下記あり。
▼「ドロイゼンの「史学論」(一八五七)におけるGeschichteの問題 」名古屋大学教養部『紀要 A (人文科学・社会科学)』第23輯 、一九七九年三月
▼「ホイシにおける「歴史主義の危機」の問題 」名古屋大学教養部『紀要 A (人文科学・社会科学)』第25輯 、一九八一年九月
▼「戦間期ヨ-ロッパ歴史思想における「危機」の問題」名古屋大学教養部『紀要 A (人文科学・社会科学)』第30輯 、一九八六年二月
▼「『歴史的基礎概念事典』――〈Geschichte〉の項――」日本大学文理学部『學叢』第43號(昭和62年度)一九八七年十二月「特集 辞書・事典」