中央公論社と私

文藝春秋1999-11 ¥0
購入: 2010-09-17 ¥300
讀了: 2010-09-18 人文・思想

[投稿日] 2010年9月17日

 著者の『和田 恒 追悼文集 野分』(私家版、1981)への寄稿にも拘らず、この本で和田のことは觸れる程度であったのは案外だった。和田の病死は高梨茂の部下であったことからくるストレスのためと暴露されてゐる(p.228)。高梨のことをもっと知りたい。上司としてはひどい人格だったらしいが部下ならぬ讀者には知ったこっちゃない、編輯者としては「職人肌」「完全主義」(p.184)で企劃にシブい古本趣味が良く出てゐた。その嗜好のつながりで言ふと、『歴史と人物』編輯時のことに存分に筆を割いて貰ひたかった。本人も「私の中央公論社編集者時代でもっとも充実した三年間」(p.217)と言ふ位だから、『中央公論』や『思想の科学』の内情のことなんかより餘程面白くなりさうに思ふ。内紛や外患による治亂興亡を敍する方がジャーナリズムの需めには合ふのだらうが、本好きにとってそんなに悦んで知りたい事柄ではあるまい。

国立歴史民俗博物館研究報告 第61集

第一法規出版1995-01-20 ¥4,928
購入: 2010-09-12 ¥100
未読

[投稿日] 2010年9月12日

一九九五年一月發行。共同研究「生命観―とくにヒトと動物との区別認識についての研究」

目次 http://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/ronbun/ronbun3/index.html#no61

振仮名の歴史 (集英社新書)

集英社2009-07-17 ¥0
購入: 2010-09-12 ¥322
讀了: 2010-09-21 言語学

[投稿日] 2010年9月12日

 著者のマニアックな良さが新書判だと出せなかったやうで、ガッカリ。この程度が當今の新書に求められる「わかりやすさ」なのかも。
 チト驚いた豆知識をメモ。「『夜想』などの雑誌を出版していたペヨトル工房(一九七九?二〇〇〇)を主宰していた今野裕一は筆者の実兄であるが、筆者も「北野真弓」などという名前を使って『夜想』の編集の手伝いめいたことを少しの間していた」(p.147)。それだから『消された漱石』はあんな凝った版面設計だったのか?

ドイツ史学思想史研究 (1976年)

ミネルヴァ書房1976 ¥3,888
購入: 2013-11-23 ¥1500
讀了: 2010-09-10 古書

[投稿日] 2010年9月11日

 期待したコゼレックらの概念史・社會史についてはこの本が取り上げた後の時代に屬すゆゑ論及されてなかった。概觀としてはよく調べてあるものの、對立する二項を取り出したところで論が終ってしまふのでもっと突っ込んだ考察が欲しい。これをちゃんと「思想」史とするには、哲學的訓練を經た上で諸概念の歴史的關係の内實を論理に即して考へ詰める作業が要る。
 本書刊行以降に發表された關聯論文として下記あり。
▼「ドロイゼンの「史学論」(一八五七)におけるGeschichteの問題 」名古屋大学教養部『紀要 A (人文科学・社会科学)』第23輯 、一九七九年三月
▼「ホイシにおける「歴史主義の危機」の問題 」名古屋大学教養部『紀要 A (人文科学・社会科学)』第25輯 、一九八一年九月
▼「戦間期ヨ-ロッパ歴史思想における「危機」の問題」名古屋大学教養部『紀要 A (人文科学・社会科学)』第30輯 、一九八六年二月
▼「『歴史的基礎概念事典』――〈Geschichte〉の項――」日本大学文理学部『學叢』第43號(昭和62年度)一九八七年十二月「特集 辞書・事典」

明治時代の歴史学界―三上参次懐旧談

吉川弘文館1991-01 ¥0
讀了: 2010-09-10 ノンフィクション

[投稿日] 2010年9月11日

 關心薄い分野ですら學者爺いの昔話を讀んでゐると面白くなってきてしまふのはなぜかしらん。 
 老人のそれからそれへの想ひ出話につきあふうち、高田早苗の美辭學は三上の代筆だ(p.40)とか、ひょんな一行一句が光って眼に飛び込んでくるのが嬉しい。無論、光を帶びるのは讀み手の照明の當て方次第にせよ。

永原慶二著作選集〈第9巻〉歴史学叙説・20世紀日本の歴史学

吉川弘文館2008-03 ¥19,440
讀了: 2010-09-10

[投稿日] 2010年9月11日

 惡い意味での思想史なのか? 歴史家の思想傾向・イデオロギーの裁斷で以て史學史を敍述したつもりになるのは止してもらひたい。特に、『20世紀日本の歴史学』「I 近代歴史学の成立」で大正・昭和戰前の史學を述べる段(本領である戰後歴史學を扱った「II 現代歴史学の展開」はまだしも役立つのだが)。情報量不足で知識の得られない歴史書なんて讀むに堪へない。思想の前に、もっと知識を! 清原貞雄『増訂日本史學史』(1944)の方が餘程立派だ。

戦間期日本の社会思想―「超国家」へのフロンティア

人文書院2010-03 ¥0
讀了: 2010-09-12

[投稿日] 2010年9月11日

 引用文で當時は普通だった用字にまで「ママ」とルビを振るから、若い者の物知らずに見えてしまふ。註を見ると拔かりなく調べてある風なのだが、博搜にも拘らず、「序章」「終章」の問題設定が詰まらないのは取って附けたお體裁だからなのだらうか? 總體に考察や論評が弱く、折角掘り出した素材の旨味を生かせてないやうな。「あとがき」で池田浩士の談と云ふ「オタク精神」(p.455)とは、「精神」である以上、資料漁りの物慾にだけ發揮さるべきものではあるまい。といって超國家主義者たちの「非合理」の情念に共感されても下らない、如何に國家を超えるかなどと下手に眞面目ぶるよりも面白がりの態度を取った方が知的準位を保つことあるべし。次作でひと皮剥けることを期待。個々の事實の細敍については卒讀ではつきあひきれない、後日借り直すか。