隠喩・神話・事実性―ミハイル・ヤンポリスキー日本講演集

水声社2007-05 ¥2,160
讀了: 2010-10-06 文学・評論

[投稿日] 2010年10月6日

 興味持って讀めたのは「文献学化――ラディカルな文献学のプロジェクト」(乗松亨平譯)のみ。ヴォルフに發する近代文獻學の歴史を顧みるに、シュライエルマッハー→ディルタイの解釋學に至る正統哲學路線に抗してフリードリヒ・シュレーゲル及びニーチェの非正統的な文獻學があったといふ見取圖で、刺戟的ではある。曰く、「哲学者たち」が「テクストを現在の必要に適合させる」ため「アレゴリー的解釈を発明し」た一方、文獻學者は「ロゴスの中継にのみ関わり意味には関与しない」(p.72)。「文献学が、理解する無理解という学問として興った」……「文献学がテクストの意味を理解しない学問として自己規定するのは」(「理解しない」に五字傍點)……「文献学は哲学により形成される。その分身として、理解[二字傍點]を希求する哲学に対する批判として、反省されざるものという哲学に不可欠の層に関する知として」(p.73)。ここでシュレーゲルの「無理解について」(山本定祐譯「難解ということについて」)のイロニー論を持ってくるのは、うまい。また「ロゴスの物質性」(p.73)の傳承を事とする、その意味での文獻學は、殆どメディア論に接近してゐる。でも最後にハイデガーなんかで締め括るのは勘辨な。それでは結局哲學になってしまふ。もっとラッハマンとかシュピッツァーとかアウエルバッハとか檢討すべき文獻學者が居るでせうが。
cf.http://members.at.infoseek.co.jp/studia_humanitatis/RhetoricabookIII.html
http://6728.teacup.com/humanitas/bbs/t2/l50

ヘーゲル以後の歴史哲学―歴史主義と歴史的理性批判 (叢書・ウニベルシタス)

法政大学出版局1994-07 ¥0
讀了: 2010-10-05 人文・思想

[投稿日] 2010年10月5日

 譯者(古東哲明)の〔 〕による補足が必要以上に多い。
 卷末「文献表」に邦譯を補ってあるのは哲學書ばかり、マイネッケすら漏れてゐるってどういふこと? 
 その分析はなかなか讀解の參考になるものの所詮は哲學者の論、哲學史に限定されてをり、歴史家であるブルクハルトやドロイゼンの章を立ててゐるとはいへ、科學史(學問史)に及ばない。「歴史認識の実践〔暗黙裡の行為〕を哲学的に解釈することと、その歴史認識の実践自体との、事柄としては必然的なつきあわせ〔対比〕を、おこなわないままにとどめざるをえなかった。そうしたつきあわせ〔対比〕は、科学史家との共同作業をつうじてのみ、なされるべきだからである」(p.38)。これだから哲學者って……カッシーラーやフーコーの爪の垢でも煎じて飮め。 
cf. 笠原賢介譯ヘルベルト・シュネーデルバッハ「歴史における‘意味’?――歴史主義の限界について――」http://hdl.handle.net/10114/3995

権力の読みかた―状況と理論

青土社2007-07-01 ¥0
購入: 2010-10-03 ¥300
讀了: 2010-11-16 社会・政治

[投稿日] 2010年10月3日

 筆名・萱野三平(なんで?)。
 前半はわかりやすい情勢論、現代時事に關心無いのでふうんさうかと思ふだけ。後半のフーコー論は部分的には拾へる知見があるが、あやふやな抽象性の域で論じてをり、歴史研究の具體性に結びつける必要があらう。

歴史主義 (1970年) (社会科学ゼミナール)

未来社1970 ¥454
購入: 1995-11-04 ¥200
讀了: 2010-09-29 古書

[投稿日] 2010年9月29日

 一九九六年に讀んで誤植を訂した形跡まで殘ってゐるのに、内容は全く記憶に無くなってゐた。 
 マンハイムは、歴史主義の弊とされる價値相對主義はリッケルト流認識論の「絶対的形式化」から來ると批判し、空虚な形式主義にならず實質的な内容を以て充たしてこそ眞の歴史主義だと提言するわけで、不變のアプリオリと見られがちな形式や範疇とて時代毎の歴史性に拘束されたものだといふ指摘には同意するにせよ、さういふ當人の議論が專ら抽象論であり、固有名詞や文獻を擧げて内容を具體的に引照しながらそれらと挌闘する歴史實證的な姿勢に乏しいのは、所詮はドイツ精神主義・觀念論の圈内に拘束されてゐたのか。ともあれ、トレルチが歴史主義の二大特徴とした個別性と發展とのうち、前者に偏るマイネッケ流が多い中で後者を重視したマンハイムもゐたといふ見取圖は得られた。と言っても、發展概念を辨證法のダイナミズムの方向で活かさうといふマンハイムの試みは解決になるまい。
 マンハイムの本文は別に難解ではないが、むしろ卷末の徳永恂「〔解説〕マンハイムと歴史主義の問題――一九二〇年をめぐる思想史的覚え書――」の方が力篇だけどいまひとつ解りにくい。

メディア・リテラシーの社会史

青弓社2005-12 ¥0
購入: 2010-09-27 ¥500
未読 社会・政治

[投稿日] 2010年9月27日

 理論的ディシプリン(訓練)が足りないまま、理論めかした感想文をあまり適切でもない事例を適當にまぶして綴ってゐる感じ。

目次 http://www.seikyusha.co.jp/wp/books/isbn978-4-7872-3252-6
http://www.seikyusha.co.jp/wp/rennsai/yohakuni/blank44.html

知の歴史社会学―フランスとドイツにおける教養1890~1920

名古屋大学出版会1996-03 ¥0
¥0
讀了: 2010-09-26 社会・政治

[投稿日] 2010年9月26日

 副題にある「教養」よりは「教育」を論ずる。フランスの教育制度や教育改革について記述した前半は退屈。後半、第4章以降やうやく思想史らしくなってきて、ランソン、セニョーボス、デュルケームらの言説(專ら教育論だが)が紹介され考察されると興味が湧く。特に、歴史主義及びフランス史學史に關しては。しかしドイツとの對比はあまり成功してないと思ふ。