圏外の精神―ユマニスト亀井孝の物語

武蔵野書院1999-06 ¥2,160
購入: 2013-08-11 ¥300
讀了: 2011-06-02 人文・思想

[投稿日] 2011年6月2日

 起しの鉤括弧だけあって閉ぢ括弧が無い脱字が目立った。
 「14 軍服姿の鴎外」の假名遣論批判、「34 あたらぬも八卦」「35 似てい過ぎるよ」の大野晋による日本語のタミル語起源説への贊同、これらは著者に同意できない。カトリック信仰なんかは好き好きに信じてくれればいいことだが。
 「10 腐儒」に述べる所は、むしろ山田忠雄からの批判の方を尤もに思った。「19 礼節」も一往尤ものやうだが、禮節を蹂み躙っても眞を追究するのが學者であるべきだと考へる者にとっては、「6 師弟」の橋本進吉批判を容れない態度は、小松英雄ならずとも失望させられるものだ。
 土井忠生との確執もさることながら(「7 キリシタン研究」「32 森田武」)、「21 まことに驚き入ったる悪文」及び「33 学問に執する」pp.181-182の記述から龜井孝と中田祝夫との間には相容れぬものがあったやうに推測されるが、雙方の弟子と言へる小松英雄はどう思ってゐたのだらう。
 豆知識――「この「翻字」という言葉は厳父[龜井高孝]の発案だということを、先生から常づね聞かされていた」(p.218)。

目次 http://www.musashinoshoin.co.jp/shoseki/view/1166/

西洋哲学史再構築試論

昭和堂2007-11 ¥0
讀了: 2011-06-01 人文・思想

[投稿日] 2011年6月1日

 哲學史を主題としながら、哲學者の非歴史性といふか歴史への鈍感ぶりを窺はせる一册となった。村井則夫「生の修辞学と思想史――ブルーメンベルクと『近代の正統性』――」(第4章)くらゐが例外か。それにしても思想家・哲學者に即した「人とその思想」形式が多くて、哲學史と稱するには歴史の流れを展望する視力に乏しい。一ノ瀬正樹「感覚的知識の謎――ロック認識論からするプロバビリティ概念の探究――」(第5章)なんか、ちゃんと歴史認識論につなげればもっと面白くなりさうなのだが。就中「過去的出来事の確率原理」に關し、量子力學における「波束の收縮」論が確率が確實性へと突然變化するのには觀察乃至觀測が關與すると見て、それを「瞬時の非連続的変化の機会」と表現したことにつき、「それはまるで、古典的な機会原因論者マールブランシュの語り方のように聞こえる」(p.190)と言ふ邊り、示唆深い。殊に、カール・シュミット『政治的ロマン主義』を歴史主義の潮流の中に置いて讀んだ者としては。小西善信「個物の問題」(第9章)も、近代は「個物の忘却史」(p.375)と斷ずる前に、なぜ近代史學に眼を向けなかったか。新カント派が「個性記述的 idiographic 」と呼んで歴史學の位置附けに苦心し、トレルチやマイネッケが歴史主義の原理として個性化を擧げたのは、アリストテレス以來「個物は曰く言ひ難し」とされる個物へと迫る試みであった筈。

目次 http://www.showado-kyoto.jp/book/b96715.html

歴史社会学とマックス・ヴェーバー〈上〉歴史社会学の歴史と現在

讀了: 2011-05-16 社会・政治

[投稿日] 2011年5月16日

 佐藤健二「柳田国男の歴史社会学」は既往の讀者にとっては新味無し。田中紀行「現代日本における歴史社会学の特質」の、日本では日本史研究者が社會史を近現代でやらないからその空白を埋める意味で歴史社會學と稱して社會學者が代ってやってしまふといふ指摘(p.170)は、言はれてみれば妙な分業關係ではある。しかしこの『(上)』を見る限りウェーバーは名目だけといふ感じだ。國際會議にありがちな中身薄い寄せ集め。下卷は見送り。

目次 http://honto.jp/netstore/pd-worklist_0602296077.html

現代思想2007年11月臨時増刊号 総特集=マックス・ウェーバー

青土社2007-11 ¥1,440
購入: 2011-05-10 ¥0
讀了: 2011-06-10 人文・思想

[投稿日] 2011年5月10日

 野口雅弘「信条倫理化する〈保守〉 ウェーバーとマンハイムを手がかりにして」上野俊哉「母のスワン・ソング、息子のデス・ディスコ」がまあまあ。荒川敏彦「殻の中に住むものは誰か 「鉄の檻」的ヴェーバー像からの解放」と三笘利幸「「没価値性」から「職業社会学」へ 尾高邦雄のヴェーバー受容をめぐって」は誤譯批判として心得ておく。

目次 http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%DE%A5%C3%A5%AF%A5%B9%A1%A6%A5%A6%A5%A7%A1%BC%A5%D0%A1%BC

思想 2007年 11月号 [雑誌]

岩波書店2007-10-30 ¥1,543
購入: 2011-05-10 ¥0
讀了: 2011-06-12 雑誌

[投稿日] 2011年5月10日

特輯「ソシュール生誕150年」
 期待したほど面白い論文は無かった。部分では得る物があるのだが、物足りない感じで終るのが多い。
 幾つかの論文に共通する點として、「共時」をどう考へ直すかが要所か。

目次 https://www.iwanami.co.jp/shiso/1003/shiso.html

ニッポンの書評 (光文社新書)

光文社2011-04-15 ¥0
購入: 2011-05-04 ¥0
讀了: 2011-05-05 本・図書館

[投稿日] 2011年5月4日

 こんなに本が好きなのに、自分には興味の無い世界がこれほどあるなんて、書物の世界は廣い廣い。逆に言へば、世間普通の讀者はここにあるやうな本への關心が大半なので、自分が偏り過ぎてゐるのだらうが。著者は書評と評論・批評とを截然と分けてしまってゐるが、書評といふか正確に呼ぶなら現代小説の新刊紹介、サマリーだな、これは。それはそれで藝を磨いてくれればよいけれど、では、さうでない意味での人文書讀みのための書評論は那邊にありや。

http://d.hatena.ne.jp/leeswijzer/20110505/

目録学 (1979年) (東洋学文献センター叢刊影印版〈1〉)

汲古書院1979-03 ¥1,836
購入: 2011-04-29 ¥1000
讀了: 2011-06-25 古書

[投稿日] 2011年4月29日

 章學誠『校讎通義』が讀みたくなる。 
 内藤湖南『支那目録學』からどの程度に踏襲しまた踏み出してゐるかを測らねばなるまい。
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/iocpicservice/110330~%E5%80%89%E7%9F%B3%E6%AD%A6%E5%9B%9B%E9%83%8E%E5%8D%9A%E5%A3%AB%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88/05019~05019%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%9B%AE%E9%8C%B2%E5%AD%A6/

http://picservice.ioc.u-tokyo.ac.jp/01_130112~%E6%BC%A2%E7%B1%8D%E7%9F%A5%E8%AD%98%E5%BA%AB/110330~%E5%80%89%E7%9F%B3%E6%AD%A6%E5%9B%9B%E9%83%8E%E5%8D%9A%E5%A3%AB%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88/050190~050190%E4%B8%AD%E5%9C%8B%E7%9B%AE%E9%8C%B2%E5%AD%B8/