[投稿日] 2010年10月16日
自著・自論文の參照が註に多く、これまでの研究を一般向けに噛み碎いた感じ。確かにこの本から遡って讀めば『公共圏の歴史的創造』も解りやすくなる。しかし大事なところは專門論文に讓ってしまった感じも與へる。併讀せざるを得ないのか。
だが、近代性をターゲットにする著者の問題設定からすれば、中世史よりも、もっと近世乃至初期近代に踏み込んでよいのでないか。出版と讀書革命とを扱ふ終章をむしろメインとして貰ひたくなる(これは中世人に同情の無い、あまりに近代讀者の讀後感に過ぎるかも)。
中々さうならないのは、中世史に於る程の研究や論爭の蓄積された厚みが無いからだらうか。實際この本は、戰後歴史學における中世史研究の學史・研究史論としても讀めるところが取り柄でもある。
目次 http://blog.livedoor.jp/ppdwy632/archives/51477192.html