歴史で考える

岩波書店 / 2007-03-28刊 / ¥5,184
讀了: 2010-09-10 歴史・地理

[投稿日] 2010-09-11

 大掴みな圖式を得るには役立つにしろ、細部に宿る神々を感じさせないのは歴史家としてのセンスを疑はせる。メタヒストリーなるがゆゑに概説になってしまったのかもしれないから、本領の歴史研究を讀んでから評定すべきだらうが、その意味で成田龍一と相通ずるのはわかる氣がする。「あとがき」(p.515)で「近年もっとも親密な「共同謀議者(co-conspirator)」である成田龍一」について「非常に複雑なテーマも明快な三点で説明できる超人的能力は私たちが見習うべきモデルを示してくれた」、って……巧まざる皮肉かね?

文学・文化研究の新展開―「間テクスト性」

研究社 / 2002-10刊 / ¥3,672
購入: 2011-02-04  /¥1000
讀了: 2011-02-16 文学・評論

[投稿日] 2011-02-04

 構造主義等の術語が頻繁に出てくるのは當然ながら、譯者獨自の譯語を當てて却って解りにくくしてゐる。この方面に親しんでゐる讀者ならば原語を想ひ浮べて對處できるが。引用は既譯があるかどうか調べて、それに從ふか、從へないまでも邦譯書を對照すべきだらう。森田孟、この譯者のものは以後信用すまじ。
 譯文を離れて本文はといふと、整理にも解釋にも特に優れてゐるとは思へず凡庸、手元に置くほどではないか。

文化の文法―40の行動原理

彩流社 / 2000-05刊 / ¥3,024
購入: 2010-06-02  /¥300
讀了: 2010-06-08 人文・思想 ★1箇

[投稿日] 2010-06-02

 有名な「エティック/イーミック」概念を立てた言語人類學者の理論を知りたかったのだが、博大な經驗的知識を二流(second class)の哲學で原理化してゐるやうにしか見えない。或いはsecondhandといふか、引用してゐる哲學を見ても筋が惡い。四つの素性とか言ひ出した所は、全然畑違ひだがタルコット・パーソンズのAGIL圖式を想ひ出させた。文化差の話をしてゐる所も、良くてエドワード・ホール止まりの氣がする。全くアメリカ人の粗大さってのは……。まあ一九一二年生まれの爺さんだから理論が古臭くても當然だし、『英語学の基本概念 タグミーミックス入門』(而立書房)に就くべきだったのかもしれず、評價は保留しておく。譯文も二流だし。パイクが「単一言語デモンストレーション」と稱する講義で評判を取ってゐたのは知らなかったが、さぞや面白い見世物ではあらうものの、それでパイクに傾倒してしまった譯者もどうかと思ふ。

サントリー文化財団30周年記念 サントリー学芸賞選評集

サントリー文化財団 / 2009-11-01刊 / - /
購入: 2016-04-29  /¥100
未読 人文・思想

[投稿日] 2016-04-29

 「非売品」。書評集と見做せる。
http://www.arsvi.com/b2000/0911sbz.htm

悍 第4号 特集:嗚呼、左翼

白順社 / 2010-05刊 / ¥5,316
購入: 2010-05-16  /¥0
未読 社会・政治

[投稿日] 2010-05-16

 戴きもの。目次中、唯一食指が動く高田里惠子「嗚呼いやなことだ 自虐と倫理」は相變らず達者な筆で讀ませるものの、『グロテスクな教養』で教養主義の「いやったらしさ」を批判したのと結びつけて考へて貰ひたかった。私見では、「自虐」から釀される一種のユーモアを讀み取れるかどうかが高見順評のポイントになる筈で、多分そこが自罰・自責・自己批判等とは違ふのである。

目次 http://www.linelabo.com/han/no004index.htm