[投稿日] 2011-10-09
同時代評としてリヒャルト・トーマ「議会主義と独裁のイデオロギーについて」とレオ・ヴィットマイヤー「シュミット『現代議会主義の精神史的地位』(初版)の書評」の二篇をも收めるのが、みすず書房版稲葉素之譯に優る。譯文は一長一短だったと思ふが、いづれまた對照しながら讀み直さう。
政治(學)に關心薄い讀者すら引き込むシュミットの行論の魅力は、「第二版への序」で自ら強調する「原理的」考察にあり、從って理念史になる。但し原理的批判だけで議會主義を葬り去らうとするのはいかにもドイツ流本質主義の近視眼、むしろイギリス流の實地の運用を通じた實踐面の含みを注視しなくては議會制(とその精神)が維持されてゐる訣も理解できまい。「ブルジョア像の歴史はブルジョワ自身の歴史と同じ位重要性を持つ」(p.99)とまで言ふ理念志向のシュミットは、現實それ自體よりもそれを像(イメージ)や觀念において扱ふのが巧くてそこが面白い所だが、その分プラグマティズム(=語用論)から離れる。或る意味、政治を論じながらこれほど政治を遠ざける思考もない。けだし實踐活動を嫌ふノンポリ書齋人の興味を惹きつける所以か。