内藤湖南全集〈第12巻〉

筑摩書房 / 1997-10刊 / ¥8,100
讀了: 2011-07-08

[投稿日] 2011-07-08

 佐村八郎『國書解題』を難ずる文は本卷『目睹書譚』中「野籟居讀書記」二(pp.69-71.)にて、谷澤永一も再三引く所なれど、これ即ち、湖南は鄭樵「校讎略」における解題法の論(『支那目録學』pp.416-417,「支那の書目に就いて」p.457)を應用せるものなりと覺えたり。『支那目録學』は冒頭に「かの佐村氏の「國書解題」などでも[……]解題の意味をなさぬ」云々と見え、また『支那史學史』「九 宋代に於ける史學の發展」中「七 鄭樵の通志」にも崇文總目の解題の冗を批判せる條を引きつつ「これなどは近頃出来る解題の中にもあてはまるものがあるであらう」(東洋文庫版p.316)と述ぶるは『國書解題』が念頭にありたるものの如し。

支那史学史〈2〉 (東洋文庫)

平凡社 / 1992-12刊 / ¥3,240
讀了: 2011-07-08 世界史

[投稿日] 2011-07-08

 全體の三分の一を占める清代の記述が壓卷(『清朝史通論』の「経學」「史學及び文學」の章と併讀すべし)。新しい時代から遡って讀んでいった方が面白いかも。章學誠論が未成に終ったのは惜しい。
 索引の間違ひと不足が少し氣になった。

支那史学史 (1) (東洋文庫 (557))

平凡社 / 1992-11刊 / ¥3,132
讀了: 2011-07-08

[投稿日] 2011-07-08

 湖南全著作中第一に指を屈すべき名著――但し、學問方法論への志向を讀み取らねば眞價が味はへまい。鄭樵その他目録學に關する敍述もかなり含み、湖南全集第十二卷「支那目録學」と竝べて補ふべきもの。吉川忠夫「解説」も良い。
 瑕釁はある。唐代の杜佑『通典』について、内藤湖南全集の「通典の著者杜佑」(第六卷、初出一九二九年)「昭和六年一月廿六日御講書始漢書進講案」(第七卷)での高評價に比べると記述が薄くて目立たないのは、不審。しかも朱子が杜佑を「古を是とし今を非とするの書である」と評したとある(p.317)のは、講義ノートに據った遺著にしてもひどい謬記で、原文は「非古是今之書」(朱子語類卷第一百三十六歴代三)と正反對。それでなくては支那には珍しい杜佑の進歩主義を評價した意味が無くなってしまふ。さらに、杜佑が民俗學的考察法の先驅である點について他では強調してゐたのにこの『支那史學史』中に全く觸れてないのも訝しいことで、湖南もまだ大正年間の講義中にはそれに氣づいてなかったとか?