古書通例―中国文献学入門 (東洋文庫)

平凡社 / 2008-06-01刊 / ¥3,132
讀了: 2011-07-23 本・図書館

[投稿日] 2011-07-20

 「一つの手がかりとして、中国の古書を論じる際にしばしば用いられる「形制」という概念を導入し、これを余嘉錫のいう「体例」に対置してみたい。両者はともに書物の内容よりも形式に着眼するものだが、前者が材料、形状、行格、書写方法等、主として技術的な側面を指すのに対し、後者が書名や撰者名、書物の構成や著述の習慣等、より実質的な側面を指すという違いがある。」(内山直樹「解説」p.355)
 本書で古書とは前漢以前に竹簡や絹帛の卷子で傳へられた先秦諸子の古典なので餘りに縁遠く、對象そのものの興味は薄い。中文中國史專門でないと讀んでも仕方無いかも。ただ、書名・著者名・編次その他のあり方即ち「体例」から考證してゆくといふ方法は面白く、幾分かジェラール・ジュネット『スイユ』に通じ、フーコー「作者とは何か」からロジェ・シャルチエ『書物の秩序』が引き取った議論を想はせないでもない。ここに論じられた支那古代の書物と對照することで、蔡倫紙以降の我々の「書物」の既成概念を歴史的に相對化し改めて問ひ直す契機は得られよう。でも、支那人は古を求めるに專らだし、邦人の支那學徒も專門研究に沒頭して一般讀書人に訴へる所無く(『古書通例』の譯者ら然り)、日本や近代の書誌學と繋げるさういふことまでやってくれないんだよなあ……。

https://yujiaxi.wordpress.com/

章学誠の知識論―考証学批判を中心として (創文社東洋学叢書)

創文社 / 1998-03刊 / ¥8,640
購入: 2014-02-22  /¥2750
讀了: 2011-07-21 人文・思想

[投稿日] 2011-07-20

 章學誠論としては當然なのかしれないが『文史通義』の解讀に專らで、『校讎通義』が殆ど出て來ず目録學にまるで觸れないのは期待と違った。最終章「章学誠のテクスト論」が哲學的な解釋學になってしまったのは(實際、卷末英文目次だと「テクスト論」に當る部分がHermeneuticsである)、その所爲もありはしないか。「思想家章学誠像と歴史家章学誠像とを止揚」(p.6)と言っても、これではあまりに哲學者であり過ぎる――史學者であるからには資料論があらうに。或いは、それは章實齋先生とて不足で讀者が補ふべきものなのだらうか。
 從來の儒者像と「学者(scholar)」との別を説きて輕輩で政治參加の途無き章氏を後者と見るは宜なり。されど學問のための學問と化せる清朝考證學への批判者とせむには、いささか不整合ならずや。章學誠の言ふ「經世」や「義理」の語は宋學に藉りたるも換骨奪胎、既に道徳臭を脱せりと説くは卓見なるべし。されどなほ研究主體の「倫理」を求むるは如何はし。考據學を後ろ向きの知識、藏往の學と難じて、現在・未來志向の知來之學を唱へたりと云ふ。されど史學は前言往行を考論する後ろ向きの學問なるを如何せむ。最後の點、島田虔次の章學誠論「歴史的理性批判――「六経皆史」の説――」(『岩波講座哲学 4 歴史の哲学』一九六九年)にても解説不足なりき。理性の歴史的な批判ではなく、歴史主義の思考である「歴史的理性」の批判=吟味であってこそ「考証学を越ゆべきことの哲学、同時に考証学の哲学」と呼べよう。
 同著者による論文「近代の予兆と挫折――清代中期一知識人の思想と行動――」「立身出世の階梯を諦めた人々――章学誠の"紹興師爺"像を中心に――」も併せ讀む。
 http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/UCRC/2006/data/0502shanghai.htm
→ http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/UCRC/archives/2276
 http://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/il4/meta_pub/G0000007repository_111E0000014-9-6

博士論文目次 http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I002003426-00#

古文献整理法―和漢古資料組織法

樹村房 / 2010-07刊 / - /
讀了: 2011-07-20

[投稿日] 2011-07-20

 木野主計著。圖書館學が支那目録學をどの程度參照してゐるかと思ったら……ほんの觸りだけか、やはり。一往、司書資格科目の講義で長年教へられてゐたことは判ったが、副題「和漢古資料組織法」のうち漢籍については他の人の擔當だったのを了承を得て攝取した由にて、嚴密には木野の著述でない。結局、目録學は漢籍取扱ひ法としてしか受容されてなく、近代日本に應用する見方は出てないのか。

目次 http://www.jusonbo.co.jp/kikan_shosai/01/kikan_shosai_01_26.html