忘れ得ぬ国文学者たち―并、憶ひ出の明治大正 (1973年)

右文書院 / 1973刊 / ¥1,296
購入: 2011-04-29  /¥300
讀了: 2011-05-02 古書

[投稿日] 2011-04-29

 國文學研究史の背景としては使へる。
 著者が沼波瓊音が大好きなのはよく解ったが、あまり魅力を感じない。同樣に岩本素白も言はれるほどいいと思はぬのはこちとら散文的な朴念仁だから仕方無いのかしれんが、しかし紹介されてゐる岩本書翰はなかなか讀みたくなる文章なので、全部を收録するといふ『近世日本文学管見』を探すとしよう。それにしても、著者の文章はその敬慕する文筆家たちの影響がまるで感じられず、平易ではあるが可もなく不可もなく、凡庸な文體なのは不思議。ほんの稀に凝った用字が出るくらゐ。福澤諭吉に倣ったわけなのか? 纔かなこだはりであった歴史的假名遣も歿後の新版では現代假名遣ひにされてしまったので、敢へて舊版を探してゐた。

1.kamiyam 【2011-05-07 3:59】 (削除)
私は伊藤の文体は結構好みです。まさに平易かつ凡庸なところがいいなあと。
2.森 【2011-05-07 14:48】 (削除)
 いやあ、惡いとも嫌ひとも思ひませんが、特徴の無いものを好むのは難しい。森銑三みたいに、端正なやうでもあからさまに整へた書きぶりだと文體の特徴が掴めるんですが。フランソワ・ジュリアン『無味礼賛』でも讀んだら參考になるかしらん。

目次(新版) http://www.yubun-shoin.co.jp/book/book_detail/4-8421-0007-9.html 

文学研究における継承と断絶―関西支部草創期から見返す (いずみブックレット)

和泉書院 / 2009-11刊 / ¥1,080
購入: 2011-04-26  /¥404
讀了: 2011-04-26 文学・評論

[投稿日] 2011-04-26

 企劃者の「近年の研究状況は、[……]現下の立脚点になった「近過去」の積み重ねにあまりにも冷淡」(p.2)といふ問題提起は結構なのだが、シンポジウムがまるで討論になってない感想會なのはいつものことながら殘念、但し前田愛のエピソードが拾へる所は面白い。パネリスト二名のうち平岡敏夫「文学史研究における継承と断絶」は過去の自文の引用ばかり、歩一歩を進めて貰ひたいのだが(特に「『明治文学史』研究」で)老齡には酷か。谷沢永一「文学研究の発想」の方は、既發表との重複も多いが流石にハナシはうまい。方法論論爭の背景にあった三好行雄の對小田切秀雄批判の代理戰爭といふ面については小谷野敦『現代文学論争』(2010.10)が特筆してゐたが、先驅けてここで谷澤本人が明言してゐるのであり、これを參照すべきだった。しかし谷澤自身が「最後にものをいうのは事実です」と約言してしまひ(p.22)、それを「最後にものを言うのは事実だ」とのみ受け取る(p.47浅野洋發言)やうでは、論爭の意義を矮小化した「継承」になる。やはり改めて「方法」について前田愛からの批判をも含めて再考すべきであり、でなくては故人も浮かばれまい。

目次 http://www.izumipb.co.jp/izumi/modules/bmc/detail.php?book_id=10062

散文の理論

せりか書房 / 1971-06-30刊 / ¥78,695
購入: 2011-04-23  /¥315
未読 文学・評論

[投稿日] 2011-04-23

 第二論文「主題構成の方法と文体の一般的方法との関係」はモチーフ論でもあり、「民俗学派について」の節に始まって口承文藝研究には示唆する所多いと思ふのだが、プロップと違ってこれが參照されたのを見た憶えないのは不審。もしや自分が勉強不足なだけかと思ってウェブ檢索したら、朝野十字といふ人がフランス構造主義におけるフォルマリスム導入に際してシクロフスキーは歪んで受容されてないかと指摘してゐた。『散文の理論』は書名通りであって詩的言語の理論ではない、といふことも。 
http://asanojuji.blog61.fc2.com/blog-entry-312.html

国語文法論 (1974年)

笠間書院 / 1974-07-20刊 / ¥972
購入: 2011-04-23  /¥300
讀了: 2011-07-08 古書

[投稿日] 2011-04-23

 さぞや大學ではテキストに使ふところもあるのだらうが、正規の國語學の教育を受けなかったため、知らずにゐたのが悔まれる。基本書にして名著、この薄さに簡約した手際も御立派。上段の本文に沿ひつつ下段に主要文法論各説が對比してあるのが參考に便であり、時枝誠記や三浦つとむ(吉本隆明の愚論は言ふも更なり)に踏み迷ふ前に、これ一册で大概濟まないか。これを入門にして著者の代表作『国語構文論』に食指を伸ばすも可、その後の内外の新理論から振り返って再評價するも可。
 「職能」と言ふは構文的機能論であり、中でも「関係的構成」(時枝文法が「辭」に見たもの)の機能(=函數)を主とする。助詞・助動詞・接續詞・副詞に神經を使って文章を書いてゐる者であれば、文の論理を構築するのに大いにこの本の解析が參考とならう。
 「はしがき」末に「昭和五十一年二月(再版にあたって加筆)」とあり。

アジア遊学 (No.7)

勉誠出版 / 1999-08刊 / ¥1,944
購入: 2011-04-15  /¥300
未読 ビジネス・経済

[投稿日] 2011-04-15

 小島毅編「宋代知識人の諸相」。これを改編したのが、伊原弘・小島毅編『知識人の諸相 中国宋代を基点として』(二〇〇一年)
Cf. http://honto.jp/netstore/pd-worklist_0602020823.html
http://bensei.jp/index.php?main_page=product_book_info&products_id=4026

目次 http://web.archive.org/web/20071020090151/http://www.bensey.co.jp/book/30.html